
(森岡 毅 (著)『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』)
仕事で思うような結果が出なかったとき、あるいは将来への不安を感じたとき、誰かに相談したくなったことはないでしょうか。
今回ご紹介するのは、実業家として数々の挑戦を続けてきた 森岡毅 氏の著書『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』(以降、『苦しかったときの話をしよう』と表記)です。
著者である森岡氏は外資系企業でマーケティングを学び、その後USJのV字回復を実現したことで知られています。現在はマーケティング会社を設立し、多くの企業の成長支援を行っています。
本書は、USJの経営再建を成功させた著者が、自身の娘へ向けて書き残した「人生と仕事の教科書」ともいえる一冊です。
単なるビジネス論ではなく、人生に迷ったときに何を軸に進むべきかを教えてくれます。
本書で語られるのは、成功体験だけではありません。挫折や苦悩を経験したからこそ見えてきた「働くことの本質」です。
自分だけの強みを見つける

多くの人は進学や就職の際に、「何になりたいか」を考えます。
しかし著者は、その前に「自分は何が得意なのか」を知ることが重要だと語ります。
世の中には無数の仕事がありますが、すべての人が同じ能力を持っているわけではありません。ある人は人と話すことが得意であり、ある人は分析や研究が得意です。
にもかかわらず、多くの人は世間の評価や流行によって進路を決めてしまいます。
著者は、自分の特徴や能力を客観的に理解し、それを最大限発揮できる場所を探すことが大切だと説いています。
例えば、魚に木登りをさせても能力は発揮できません。しかし魚が水の中に入れば驚くほどの力を発揮します。
人生も同じです。
努力が足りないのではなく、活躍する場所を間違えているだけかもしれません。
だからこそ、自分の得意なことや好きなことを深く理解し、それを生かせる環境を選ぶことが重要なのです。
キャリアは自分で選び続けるもの
本書の中で印象的なのが、「会社が人生を保証してくれる時代は終わった」という考え方です。
かつては終身雇用が一般的でした。しかし現在は技術革新や市場環境の変化が激しく、一つの会社だけに依存することは大きなリスクになっています。
そのため著者は、自分自身を一つの経営資源として考えることを勧めています。
会社に選ばれるだけではなく、自分も会社を選ぶ。
仕事を与えられるのを待つのではなく、自分の市場価値を高め続ける。
そうした主体的な姿勢が必要だというのです。
もちろん、これは転職を繰り返せという意味ではありません。
大切なのは、自分の能力を磨き続けることです。
学び続ける人には選択肢が増えます。
一方で、変化を拒み続ければ選択肢は少なくなってしまいます。
著者自身も決して順風満帆だったわけではありません。苦しい状況の中で学び続けたからこそ、新しい道を切り開くことができました。
変化の激しい時代だからこそ、自ら成長し続ける覚悟が必要なのだと感じさせられます。
苦しい経験こそ人生の財産になる
本書のタイトルにもあるように、著者は「苦しかった経験」を非常に大切なものとして捉えています。
誰しも人生の中で失敗や挫折を経験します。
仕事で成果が出ない。
人間関係がうまくいかない。
努力しても報われない。
そんな時期は誰にでもあります。
しかし著者は、その苦しみこそが人を成長させると語ります。
順調なときには見えなかった課題が見え、自分の弱さと向き合うことで人は強くなれるのです。
実際、著者自身もキャリアの中で多くの困難を経験しています。
それでも諦めずに挑戦し続けた結果、後に大きな成果へとつながりました。
苦しい時期は決して無駄ではありません。
むしろ将来を支える土台になる可能性があります。
だからこそ、今が苦しい人に対して著者は「その経験には意味がある」と伝えているのです。
苦しみの先にある成長を信じる
『苦しかったときの話をしようか』は、最初から本として執筆された現行ではなく、森岡氏が進路に迷う子供に向けたメッセージをメモに書き留めたものがもとになっています。
それだけに、人生に迷ったとき、自分は何のために働くのかを考えさせてくれる仕上がりです。
特に印象的なのは、「自分の強みを理解すること」「学び続けること」「苦しい経験から逃げないこと」の三つです。
人生は思い通りにならないことの方が多いかもしれません。
しかし、その中で試行錯誤しながら前に進むことで、自分だけの道が見えてきます。
仕事で壁にぶつかっている人、将来に不安を感じている人、自分の進むべき方向に悩んでいる人にこそ読んでほしい一冊です。
苦しみから自分の強みを見出す

苦しい経験は決して人生のマイナスではありません。
むしろ、その経験があるからこそ見える景色があります。
私もSEとしては働らく中で、キャリア形成を考えるときに自分について振り返ることがよくあります。
『苦しかったときの話をしようか』は自分を振り返るヒントをくれます。
苦しさのなか、悩みの中から自分の強みを見出すためにも読んでみたい一冊です。