
──『女性に売れる言葉とデザイン』
突然ですが、「女性に売る言葉」とはどのようなもだと思いますか?
皆さんの会社やサービスで、女性向けの商品を扱っている方はいらっしゃいますか?
もし「うちは品質が良ければ売れる」「ロジックで訴えれば納得してもらえる」と考えているなら、危険信号かもしれません。
実は、女性にモノやサービスを売るには、男性とはまったく違う「言葉」と「デザイン」が必要です。
今回ご紹介するのは、橋本夏子さんの著書『女性に売れる言葉とデザイン』。
女性心理に響くコピーとビジュアルの作り方を、実例とともに丁寧に解説してくれる一冊です。
マーケティングに携わるすべてのビジネスパーソンに刺さる内容が詰まっています。
著者である橋本夏子さんは、女性向けコンテンツプロデューサーとして活躍し、本書の出版を機に、ソーシャルビジネスコミュニティ「ワクセル」で企画された記念講演会にて、バラエティプロデューサー角田陽一郎氏とのコラボ対談も実現しています。
なぜ、女性に向けたマーケティングは難しいのか?

女性は感情で動く──そう語られることは多いですが、橋本さんは「それだけでは足りない」と言います。
女性の購買行動には「共感・安心・信頼」という3つのフィルターがあり、それらを自然にくぐり抜ける表現こそが“売れる言葉”なのです。
本書の冒頭では、男性目線で作られた広告が女性にはまったく響かなかった事例がいくつも紹介されています。
「数字で語る」「機能を羅列する」「業界用語を並べる」──これらは女性にとって「わかりにくい」「押しつけがましい」と受け取られてしまうのです。
たとえば、
×「角質除去成分〇%配合」
○「古い角質をやさしくオフして、つるんとなめらか肌に」
この違い、皆さんも感じたことがあるのではないでしょうか?
「売れる言葉」は“生活者の声”から生まれる
橋本さんが最初に強調するのは、「言葉は自分でひねり出すものではなく、お客様から拾うもの」という考え方です。
売れるコピーを作るには、アンケートやインタビュー、レビューサイトなどで「リアルな声」を集めることが出発点になります。
「肌がうるおう」ではなく「ファンデが密着するほどもちもち」など、実際に使われている“生っぽい言葉”こそが刺さるというわけです。
情報は「5W1H」で整理しながら言葉を練る。
誰が、いつ、どんな悩みを持ち、どんなシーンで使って、どんな効果があるのか。
このフレームで考えると、商品コピーが驚くほどスムーズに設計できます。
女性に好まれる「やわらかデザイン」の原則
「デザインの印象は、言葉の説得力にも影響する」──これは男性が見落としがちなポイントです。
橋本さんは、女性に響くデザイン要素として、次の3つを挙げています。
- やさしい配色(パステル・くすみカラー)
- ゆるい余白や丸みのあるフォント
- 手描き風アイコンやイラストの活用
もっとも大事なのは「威圧感を与えないこと」。
ゴシック体+黒+ビジーなレイアウトは、女性にとって“警戒モード”を呼び起こすデザインなのだとか。
逆に、「安心して読める」「疲れない」「自分ごととして受け取れる」デザインが、購買行動を後押しします。
女性の“買いたいスイッチ”を押すストーリー戦略

女性が商品を「欲しい」と思うのは、“共感”が生まれたとき。
橋本さんは、「売れる商品には物語がある」と語ります。
たとえば、「忙しいママの5分メイク」や「生理前でもごきげんに過ごせるブレンドティー」など、
ライフスタイルや感情に寄り添ったシーン設定が、「私のための商品だ」と思わせるのです。
このとき重要なのが、「誰のための商品なのか」を明確に打ち出すこと。
万人受けを狙って“ぼやけた表現”にしてしまうと、結果として誰にも刺さらない。
だからこそ、ターゲットを狭く、言葉を深くする戦略が必要なのです。
『女性に売れる言葉とデザイン』は「戦略的共感」の教科書
本書は、感性だけでなく、しっかりとしたマーケティング理論に裏打ちされた“戦略的共感”の教科書。
「女性向けって、なんとなくフワッとさせておけばいいんでしょ?」と思っている人にこそ読んでほしい一冊です。
女性マーケティングとは、“やさしさ”を装うだけのテクニックではなく、「人間理解の深さ」が問われる領域。
ここをきちんと押さえられれば、誰よりも強い武器になるはずです。
橋本夏子さんの哲学:「売れる」は、思いやりから生まれる
橋本夏子さんは、広告代理店でのコピーライター経験を経て、現在は女性向けマーケティングに特化したクリエイティブディレクターとして活躍中。
彼女の哲学は、「女性を動かす言葉は、女性を理解しようとする姿勢からしか生まれない」というもの。
“やさしさ”とは、ただの柔らかさではなく、相手に寄り添い、時間をかけて共感する力そのもの。
それが「売れる言葉」となり、ビジネスを動かします。
ワクセル出版記念講演でも語られた「言葉の力」

本書の出版を記念して開催された、ワクセル主催の「出版記念講演」では、橋本夏子さんとバラエティプロデューサー・角田陽一郎さんとの対談が実現しました。
女性の購買心理、メディアの変化、これからのマーケティングの在り方など、深く実践的な話が繰り広げられ、多くの参加者の共感を集めました。
言葉とデザインの「ちょっとした違い」が、大きな売上の差を生む。
そんな実感を得たい方に、本書はきっと新しい視点を提供してくれるはずです。