突然ですが、皆さんの会社の利益はどれだけあるでしょうか。どれだけ売り上げが高くても、利益が低い会社は生き残ることができません。だからこそ企業は、利益率をとにかくあげたい。多ければ多いほどいい。
とはいえやはり相場は存在します。営業利益率が高い業界は例えば消費者金融の約16%、ソフトウェアは15%程度、クレジットカードの13%前後となります。これらは特に利益率の高い業界と言われていますが、それでも15%程度となっています。
そのなかにあって、驚異の利益率54%を記録している会社があります。その名はキーエンス。自動制御機器、計測機器、情報機器、光学顕微鏡・電子顕微鏡を主体とする会社で、年収1,000万円の社員もを多く抱えています。
なぜ、キーエンスはそれだけの利益をだすことができるのか。今回ご紹介する元キーエンスの社員である経営コンサルタント、大崎道雄さんの著書、『「経営者・起業家のためのキーエンス流経営術 営業利益率54%と年収2100万円の秘訣』」には利益のでる経営術の秘訣が詰まっています。
利益のでる顧客を探す
高い営業利益を出すには皆さんならどうするでしょうか。それはやはり利益がでる顧客を探すことが大切です。利益のでる顧客はどこにいるか。利益のでる商品、つまりは高額の商品を「喜んで」購入する顧客はどんなひとでしょう。キーエンスのターゲットは企業、いわゆるBtoBの取引がメインとなります。
なぜBtoBとするのか。例えば自分の車を買うとき、それが好みのデザインか、あるいはポルシェなどの有名なブランドかで判断しているかと思います。それでいて、自分の財布は可能な限り痛めたくないという心理が働きます。車のバイヤーと交渉や見積もりを重ね少しでも値段を抑えようとするでしょう。
対してBtoBの場合、購入者と財布の所有者は別であり、判断基準は必要性です。
どの企業にも物品の購入を行う窓口となる担当者がいることでしょう。しかし、お金を出す財布は会社のものであり、その担当者のものではありません。もちろん、無責任にお金をひりだすようなことはないでしょうが、それでも自身のお金より財布のひもは緩まりやすくなるでしょう
キーエンスの商品は自動制御機器、計測機器、情報機器、光学顕微鏡・電子顕微鏡。導入によって生産ラインの効率、つまりは企業の数値を上げる効果がある製品になります。まさしく企業にとって必要性によって購入する製品になります。
だからこそ高い金額であっても、企業にとって必要であり効果性が認められる製品は売れるのです。営業利益を乗せやすい産業をねらう、これがキーエンスの戦略の一つです。
キーエンスの顧客はいつもこのように言います
引用:最大の付加価値を提供する
「いいなぁ、これ欲しいなぁ。高いけど」
「しないこと」を決める
「すること」を決めるのと同じくらい、「しないこと」を決めること大切です。
例えば、キーエンスは借金をしない、ということを決めています。その理由は返済計画のために、自社の経営方針が左右されることを防ぐためだそうです。
この方針によりキーエンスは返済計画にのため利益の低い仕事を行う、不利な条件下での仕事を行うということを極力避けて来ました。だからこそ高い営業利益を保つことができるのです。
他にもキーエンスが「しない」と決めていることに工場を持つことが上げられます。キーエンスは自社で工場を所有せず、製品の組み立ては全てアウトソーシングで行います。一見、余分な外注費を垂れ流す行為に思えますがこれにも理由があります。
生産ラインをアウトソーシングする分、キーエンスの社員は営業努力に注力することができ、営業利益の向上につながるというのがキーエンスの戦略です。
キーエンスは一つひとつの製品の生産量はそこまで大きくありません。自社で工場を持つメリットがそもそも低いのです。
また、商品の売れ行きには月ごとの波もがあります。それなら、組み立ては必要な量だけ外部に委託してしまおうという結論になったようです。
なお、なぜ大企業であるキーエンスがそれぞれの製品生産量があまり多くないのか。その理由についてはぜひ、この本を読んで確かめてみてください。
「つまり、付加価値の高い要素はキーエンスが担当し、いわゆる組み立てや梱包など比較的付加価値の低い仕事は外部に出しているということです」
引用:工場を持たずにフレキシブルに
付加価値を創造して「当たり前」。人のこころを動かす経営術
組織を作るのはやはり人。もちろん、キーエンスは組織を作る人材育成、そしてそれを生かす組織づくりにも余念がありません。
キーエンスの社員にはひとりひとり高いレベルのプロ意識が要求されます。組み立てなど付加価値の高い仕事は金を払ってでも外部に出す。それは裏を返せばキーエンスではそれほど商品価値を高める人材が求められるということです。
そのためキーエンスでは社内の風土を徹底的に叩き込むため、ほとんどの人員を新卒採用で賄っています。皆さんもこれまで、進学や転職などでルールや風習の違いに戸惑ったことはないでしょうか。以前の風習の癖が抜けず、新しい場所になかなかなじめなかったり守れないルールがあった、なんてこともあるかもしれません。
そのためキーエンスでは、社会人としてまっさらな新卒者を採用し教育することで会社の考え方、行動指針を徹底的にたたきこむのです。
新人のころから鍛え上げられたキーエンスの社員は、付加価値を創造して「当たり前」の意識が根付いていく。それが狙いです。育成された人材は、やがて営業利益54%の結果へとつながります。
初代社長、滝崎武光氏の背中をみて
キーエンスを作り上げた初代社長である滝崎武光氏。
世界でもトップ50に入る資産家です。本人の主義によりメディア媒体への露出は多くありません。その一方でその経営手腕、哲学は幅広い経営者に影響を与えています。
社員の平均年収は2,000万円を超えるとも言われるキーエンス。その秘密は多くの本に記され、多くのビジネスマンの指針となっています。滝崎武光氏から影響を受けた人のなかには実際に経営者として手腕を極めた方も多くいます。
様々な業界で活躍する方を集めたコラボレーションサイト、ワクセルの運営者である嶋村吉洋 ( Yoshihiro Shimamura )氏もその一人です。
滝崎氏は現在75歳。その信念と情熱はこれからも各分野へ影響を与えていくでしょう。
この記事が、滝崎氏の信念を学ぶひとつのきっかけになれば幸いです。